あちこちで崩壊。

■2007/05/09 (火)

阪南市立病院、宮崎の救急センター・・・・など次々に新しい崩壊病院が出現している。この流れはとどまることがないだろう。特に第一線で診療をしてきた勤務医たちはあちこちで、何が一番の問題なのか発信し続けている。が、一般の目に触れない、マスコミが重要問題としてとりあげない。世論も全く動かない。一番困るのは、患者さんたちなのに。
今、私ができること。自分のテリトリーの中で関わっている患者さんをしっかり守っていくことなのだろう。崩壊が露になったときに守りきれるか自信はないのだけど。

暗い思いにとらわれていたが、夕刊の記事でますます落ち込んだ。政治がまた医師偏在にかかわろうというのだ。無い袖をどう振らせるのか?動かせる公的病院の医師に強制すれば、今耐えている医者も間違いなく逃散するだろう。医局制度を再評価し、医者の人事は医者に任せてくれた方が崩壊を遅らせられるように思うが。

そして、滅多に見ない番組なのだが、世界仰天ニュースを見てまたがっかり。病気の患者の細胞の権利を争ったアメリカの事例を取り上げていたが、こうまで医者を悪者にしたてられるとは。まだアメリカ型の訴訟社会に進ませようというのだろうか?番組のゲストは単純に医者が悪いと一致していた。最高裁では患者には摘出臓器の権利はない、と病院側の勝訴だったにもかかわらず、特許で某医師がどれほどの巨額を得たのだろうか・・・と最後まで医者叩きをしていた。冷静にみれば、患者の白血病はほぼ完治したのにもかかわらず、それは評価せず。世間の人に医者は悪いことを画策していると印象付けようとする、本当に意地悪な番組つくりで胸が悪くなってしまった。おまけにその後の、日本の特殊血液型のストーリーでも、こんなおかしな対応をする医者いないと思うような医者が次々に出てきた。ゲストの某血液内科医(本も書かれていて、個人的に尊敬していたが)がおちゃらけた言動をするので、嫌悪感が三倍増。バラエティに出演する医者はろくなもんじゃない。遠くから尊敬していた方なのに、がっかりだった。

新たなるとんでも政策。総合診療科だって?

2007/05/01 (火) 某政治家さんたちがはるばる隣国まで出向いて、隣国の思うとおりの行動をとって隣国から賞賛されたそうだ。こんな国益を考えないような政治家は、やめていただきたいのは山々だが、せめて何もして欲しくない。動けば動くほど嫌悪感が募る。そして、最近は同じような思いを厚生労働省に感じる。一般内科=総合診療科?開業医の体制変動?在宅医療の推進?日本で言うところの後発の優遇・・・もう新しい政策を打ち出して欲しくない。何を考えているんだ?とアホくさくなるようなものばかり。

患者さんを目の前にすると、日ごろの愚痴は忘れて必死に治療にあたるが、暇ができて医療ニュースをみるとど〜〜〜と疲れが押し寄せる。もう見たくない、聞きたくないと目を閉ざしたい気持ちになる。でもここで逃げちゃだめなんだろうと思う。今まで世俗のことに対して逃げていた、自分たち世代も医療崩壊見過ごしてきた責任があるのだろう。軍隊のような、学生時代の運動部のような徒弟制度や身を粉にして気力で頑張れといわれ続けることに従属してきた自分。そしてそのような生活を耐えていた自分をちょっぴり誇らしく思っていた。これを大いなる自己欺瞞と認めるのは、自分が大切と思ってきたものを否定するようで辛い作業である。

開業に向けて。私にはまねできません。

■2007/04/29 (日)仲のよい女性ドクターが6月からの開業に向けて活動中。彼女が開業を決意したのは昨年末のことだった。土地持ちの親が以前からいつ帰ってきてもよいように、1階部分を準備していたので、地元に帰れば建物は確保されていた。必要な器械と人集めを始めたのは今年に入ってからであった。本当に身近に開業準備を進める様子を見させてもらったが、一言でいえば、決して簡単なものではないということ。とても些細な事から出入りの業者の選定まで一筋縄ではいかない。開業にあたっては、口のうまい業者にだまされる事例もあるというし。彼女をみて自分には開業などとてもできないと改めて感じた。結局自分は雇われ医者として生きていくしかないのだろう。

彼女の開業予定は6月下旬。いろいろなことで相談にのってもらい、愚痴も語り合った。センスがよくて、きちんとした常識家で、しかも暖かなハートを持つ彼女には、医者としてだけではなく、人間として尊敬し、あのような素敵な女性に近づきたいと憧れも持っていた。開院の折には何か心の子こもった贈り物をさせてもらうつもりであるが、さて何がよいのだろう。人望のある彼女なので、贈り物は山ほど届くだろう。無難なところではランの花だろうが、生け花もされていたので、花の心得のない私の出番はない。あと一月、何を差し上げるか考えてみよう。

自分自身ももうすぐ環境が激変するので、人事ではないのだけど・・・

タミフル糾弾の会?

■2007/04/25 (水) 某掲示板にタミフル被害者の会に参加された先生の実況があった。別の方のレスでコピーOKとされていたので、引用させてもらう。(下に転載)
私はこれを読んで、視野の狭い、頭の固い団体の恐ろしさを感じた。政治評論家のM氏が、都知事選の前に、「私の周囲の100人に意見を聞いたが、石原に入れる人は一人もいなかった。したがって石原氏の再選は絶対にない」と自分のブログで断言されていたことを思い出す。M氏の周りの百人がいかに偏狭な集団であったか、評論家と自称している割には、全く大局を読めない方であった。これも石原憎しという一念が目を他に向けないのだろう。タミフル批判派もこれと同じ構図なのではないだろうか。

実況の引用↓↓↓(やや不適切な表現のみ改変)

小児科学会のついでに、土曜日の夜、こわいもの見たさで行ってきました。
結論、行くものではない。

まず受付で、所属と名前以外に連絡先を書けとのこと、躊躇していたら住所でもメルアドでもFAX番号でもというので、FAX番号のみ書く。
参加者は結局、総勢50名くらい、被害者の会と浜ちゃんグールプで30名くらい、マスコミ関係者が10名くらい(産経、毎日、どこかのテレビ局)、ノンセクトの一般の小児 科医が12,3名くらい。

まず被害者の会の方が、ご自分の経験談を語られる。
3才のお子さんでインフルエンザと診断され、タミフルをのませて寝かしていたら、亡くなられた方と、10ヶ月でインフルエンザと診断され、タミフルを飲ませたら、それが元 で精神発達遅滞をきたした(と思っている)方、中学生の時タミフルを飲んだら異常行動をおこしたという当事者(現在高校生)とその父親の発言あり。
その後、H医師(有名な方です。医師の目からみると極めてかたよった、自分に都合のよいEBMを捏造、あえてこう書きます、マスコミにはよく露出し、患者の味方を気取る方。個人的にはこのような医師面免許を持ちながら、非科学的なデータで患者を扇動し、結果的に患者のためにはならないことをしている医師こそ、大問題だと思っている)の、いかにタミフルが悪いかという、あちこちから引っ張ってきた(自分の都合のよい)データを並べた講演会。
その後、質疑応答。
最初の被害者の方の経験を聞かせられた時点で、まともな議論は無理だな、と思いました。
それでも、勇気ある市民病院の先生が、H医師(前述)の講演内容に質問してくれました。
幼若ラットにタミフルを飲ませると、死亡率が高まるというが投与量が通常の500倍、1000倍の量で、実験の方法がおかしいのではとか、今年はタミフルを使用しなくても 、異常行動の報告が相次ぎ、インフルエンザによる異常行動はもともとある一定の発現頻度があるのでは、と、まともな医者なら疑問に思う事を言ってくれました。
それに対して、何の根拠もなく、この実験は正しいとか、被害者の方は、異常行動の程度が違う、うちの子供は死にかかっただぞ、とか、まるで議論になりません。
もう一人、質問した先生を助ける意味で、ある先生が、もっと冷静に議論して、お互いにわかりあえるようにしましょう、と言っただけでも、集中砲火を浴びていました。

まるで、新興宗教の集会(H医師教)に紛れ込んでしまったような印象でした。

単なる被害者(と思っている)の方の不満のはけ口の場で、決して何かが生み出されるとか、(医療者と患者の)相互の理解が深まるとは、到底思えない会でした。

ますます不信感がつのる。

■2007/04/23 (月) 役所には期待しないようにとあきらめているが、せめて事態を悪化させてほしくない。もう何もしねい、動いてくれないほうがましかもしれない。
医療費削減ありき、という発想から逃れられないのなら、医者の士気低下が募るばかりだ。
↓↓↓の記事に対しての感想。
なぜ、ジェネリックが増えないのか、数人の臨床医に聞けば答えはあきらかになるはずなのに。(私も何度も日記で書いているが)原因に対処せず、見当違いの方向からまた責めるそうだ。私たちの仕事はますます増えることになりそうだ。

↓↓↓記事。
ジェネリック医薬品優先使用、厚労省が処方せん様式変更へ
4月22日3時8分配信 読売新聞
 厚生労働省は、新薬と有効成分は同じだが価格が安いジェネリック医薬品後発医薬品)の普及を促進するため、医師が患者に薬を処方する際、これまでは新薬の使用が「標準」だったのを、後発医薬品を「標準」に転換する方針を固めた。

 処方せんの様式を改め、あえて新薬を選ぶ場合は、医師が処方せんに理由を明記することを求める方向で検討する。増え続ける医療費を抑制するのが狙いで、2008年度からの実施を目指している。

 現行の処方せんは新薬が基本だが、06年度の診療報酬改定で、「後発品への変更可」という欄が追加された。欄に医師の署名があれば、薬局などで後発医薬品の処方が増えると期待されていた。

インド医療。

■2007/04/20 (金) 某番組でインドに医療を受けに行く人が増えていると報じていた。
インド最大の民間病院は、600床の患者に対して、医者は300人もいるらしい。これだけ数がいればそりゃあ、手厚い一人当たりに時間をかけた医療ができるでしょう。でも、インドの中でもこういう医療を受けられるのはごく一部。格差は日本とは比べものにならない。

日本の医療が外国と比べてどれほど身近なのかをもっと国民に知ってもらわなければならない。料金も、待つ時間も。そして日本の医療の格差がほとんどないことの恩恵を受け入れるならば、逆に裏の不利益も我慢せねばならないのだと思う。

でも一度手に入れた、よい環境は手放せないものだ。そして健康という面の格差が生じることは死守せねばという、人権主義の主張を通し続ける限り、ますます医療崩壊は進むのだろう。

ああ書いていて嫌になってきました。