疑惑の業界にメス?

ずっと前から知る人ぞ知る疑惑の業界であったコンタクト販売の危ない実態がテレビで取り上げられた。(TBS、報道特集)直接人体に接するレンズを販売するので医療法上ではペースメーカーと同等の扱いで、その処方には医者の診断が必須となっている。この医者の診断というところも、眼科専門医とは規定していないのが法律の抜け穴で、私もわずかに聞いているところでは、眼科以外の医者〜内科・皮膚科・・など臨床医以外の、基礎系(解剖とか生理など患者に接することのない研究職)で名前を貸しているところも珍しくはないようだ。そして一部の廉売店では実際に眼科医が処方を書くわけでなく、何の資格も持っていないスタッフがレンズの度合いを決定することもある。これは非常に危険なことである。
実は私も7年前に値段の安さに引かれて廉売チェーンを訪ねた経験がある。そのコンタクト販売店に隣接する眼科でものすごく大雑把な診察を受け、そのあとで隣の店で若いスタッフから少し細かな検査をされ、実際にレンズを装着して「これでいいですよ」とそのスタッフに言われるままに購入した。これを使いはじめてから(今から思えば)慢性の頭痛に悩まされるようになった。現在の勤務先に勤めるようになってから同僚の眼科の先生に診てもらったら3段階ばかり強いレンズだと言われ、これが頭痛の原因でしょうと言われた。弱めのレンズに変えたとたんに、悩みの種の頭痛は消失した。
医者のくせに馬鹿なことをしていたと恥ずかしいが、コンタクト販売店に隣接する眼科はとても危ないようだ。きちんと眼科の看板を出している病院で正しい処方箋を書いてもらうべきであるが、皆がそうしだしたら廉価販売はやっていけなくなるのかもしれない。
2年位前に同僚の眼科のドクターの所にある廉価販売のチェーン店の幹部がヘッドハンティングにきていた。非常に熱心な勧誘で現在の給料よりも高額の給与を提示され同僚もちょっと心を動かされた。興味を持って何度か話を重ねたが、仕事の中身や同じチェーン店での他の雇われドクターの実態を聞いて丁重にお断りしたと聞いた。(このときにとんでもない科のドクターがいることや、掛け持ち委託管理者のこと・・・などなどを間接的に聞いた)
番組では常勤扱いの届出をしている管理者が、距離的に不可能な別の場所で常勤をしていたり(常勤管理者の届出は札幌で勤務は大阪など)、実際の検査を資格のない人が行っていることを取り上げていた。届出を監督する役所で実態を調査することが事実上不可能であるので、こうしたマスメディアの取材を掘り下げていってほしい。コンタクト業界は同じ医療従事者からみてもとても気分が悪いことが多すぎる。きっと良心的な眼科医も苦々しく思っているはずだ。
一方的で理不尽な医療側批判をされることが多くてメディアに辟易することばかりであったが、久しぶりに良質な報道特集をみせてもらった。