医療側の意見

■2004/01/16 (金)
癌患者の告知問題に悩んでいる。
まとまったら日記にも書けると思うけど、辛い、辛い。

さて昨日は白い巨塔をみてしまった。
原作とだんだんかけ離れた財前・里見になっているような気がするのは
私だけだろうか。
財前教授は部下を叱責した時にも、
最後には暖かな励ましの言葉をかけたり、
動揺する医局員をきっぱりとした態度で安心させたりと
「いい上司」のように私は思うのだけど。
実際の教授陣はもっと冷酷で対等には話できない人がいる、
とよく聞くから。
(幸い私の教授は年齢も近く、進歩的で、人の言葉に耳を傾けてくれる、
という傑出した人物だ。)

里見先生の行動は自分の範疇を超えたもので、
他の科に渡した患者に指図できないのが常識。
これは一般の人には理解しがたいかもしれないが、
複数のドクターからあれこれ指図がでると医療の現場は混乱する。
ましてや主治医以外が家族にムンテラするなど決してしてはいけないこと。
それが正論であろうとも。
(正論が必ずしも人を幸福にするわけではない、
嘘も方便という場面は多々ある。一言では説明できないが。)
里見先生は患者に直接働きかけるのではなく、
外科のドクターに意見するだけにして欲しかったと思う。
財前教授が取り合ってくれないなら、
そしてそれほど患者への熱意があるなら、
助教授・講師に働きかけるべきだと思うけど。
ああ、里見先生の無欲で誠実な態度がかくれてしまって
非常識なところばかりが目に付いてしまう。

佐々木さんの遺族は「財前に殺された」と主張しているが、
少なくとも手術は完璧だった。
癌性リンパ管症は癌の末期で、有効な治療が確立していない状態である。
おそらく誰でも佐々木さんの寿命をのばすことはできなかっただろう。
あくまでも死因は癌なのである。
死因まで医者のせいにされてはたまらないな。
そもそも内科から外科に紹介する段階で
転移の有無はみておかなくてはならないはず。
(転移があれば手術適応なし、となる)
里見先生見逃したのかな、里見先生にはその自覚がないようだけど。
(もし内科医が転移を見逃して外科に紹介したら
きっと自分を強く責めるだろう。)

夫にこんな設定おかしいよね。というと、
本当の医療事故(=おかしてはならないミス)を
取り上げたら問題が大きくなるから、
わざとおかしい〜〜!と思わせる設定にしたのではないか、
と深読みしていた。
者の立場になってみれば、
「大丈夫」と保障してくれた財前教授に最後まで見て欲しかったし、
教授自身もそう思わせる態度だったようだ。
よくも悪くも病棟主治医がメイン、上司はアドバイザー役。
だからいい研修医にあうのも運のうちであると思う。

いい医者と言っても、性格がよいが医療技術が劣る医者よりも
性格が悪くとも知識と技術がしっかりした医者に私ならみてもらいたい。
まず医療がしっかりできる、これが医者としての第一条件。
(私は・・・まだまだでございます・・・)

今後の展開は気になるが、やはり原作を読み直さなくては。

田宮版 白い巨塔について詳しく紹介しているサイトがあった。
http://kodansha.jp/webgendai/shiroikyoto/soken/index01.html
彼の生い立ち〜映画会社とのあつれきを知って、
田宮二郎がなぜあれほどまで強烈な財前役を演じられたか少し理解できた。
財前と田宮二郎の生き方は似ているのだ。
映画界の財前五郎田宮二郎だったというこの関係。
そしてドラマも彼自身も破局に向かう第二部以後には
苦悩する彼の姿があったのだった。
謎に包まれた自殺は、謎であるからかえって心をひきつける。
この人の演じた財前を、誰も超えられないだろうと改めて思った。