無給の時間外勤務

12時30分に仕事を終え、病院を出た。
家までの通勤時間は30〜40分である。
家まで500メートルくらいのところで、携帯電話がなった。
患者が急変したらしい。
肺炎で入院していたが、経過は良好で来週退院予定だった88歳の女性だ。
電話の応対は要領を得ない。
「血圧がはかれないことと、呼吸状態が悪いこと」は
わかったが、要領を得ない。
ともかく緊急の処置が必要な事態のようだ。
「当直の先生にすぐ連絡とって、みてもらって!」と頼んで、
病院へ引き返した。
家に寄る余裕はなさそうだ・・。
病院に戻ると当直の先生が挿管、心臓マッサージをされていた。
心電図はAMI様。
昼食をしっかり食べたことは看護婦さんが確認していた。
そのときには特に状態の変化はなかったらしい。
そのあと、偶然同室の他の患者を見に行った看護婦により
状態急変を発見されたのだという。
経過からは心臓か、脳だろう。どちらにしても蘇生処置にはかわりはない。
心室細動に対して電気ショックなども行ったが、反応はなかった。
1時間蘇生を粘って、家族に死亡宣告をした。
朝、元気そうだったのに、なんということだろう!

死亡原因について。
H−FABPは+−、心筋梗塞とは診断しにくい値だ。
後で出た至急の採血結果からも心筋梗塞とはいいがたい。
脳血管障害を死亡原因に書き込んだ。

元気に帰れるはずの患者の急変は打ちのめされる・・・。

すっかり暗くなって自宅に戻った。
明日は当直。疲れがとれない。家事もたまっている。
家族よ、汚い家で我慢しておくれ!

この貴重な5時間の時間外勤務はすべてサービスである。
報酬が全てではないけれど。