よくない噂

同期の医者Aが精神科に入院したという噂を聞いた。

彼は10年以上の医師の経歴があり、非常に優秀な人であるが、
3年前くらい前から原因不明の頭痛に悩んでいた。
目の奥を針でグリグリされるような痛みが時間をとわず襲ってくる
といって、大学病院もしくは大学病院クラスの病院の脳神経外科
神経内科放射線科・麻酔科・眼科・内科・外科等を受診し、
内服・注射はもちろん神経ブロックまでしてみたそうだ。
にもかかわらず、昨年夏に会ったときにも
「全然よくならない、辛い・・」と愚痴っていた。

大学で放射線科をしている後輩によれば
A医師は頭部の血管造影の結果、三叉神経のごく近くに血管が走っており
このための痛みではないかと疑ったという。ただこれを取り除くためには
全身麻酔の開頭手術が必要で、思わぬ合併症の危険性もありうる。
A医師は手術を拒否され、この科での診療はストップしたままだそうだ。

A医師は放射線科でそう診断されたことを公には言わなかった。
言いたくなかったのかもしれない。
これ以外の原因があったかどうかは不明だが、
私の知る限り他に有意な診断は得られなかったようだった。

そして昨年から仕事も休みがちとなった。
彼は勤務先の病院の内科トップだったので、
院長が「困っている、教授に彼の交代を要請している。」
と言っていると風の便りに聞いていた。

友人が彼に年末に会った時には驚くほどハイテンションだったらしい。
・・躁と鬱が交互に来ているのかもしれない。
彼に何を言っていいのか、あるいは言ってはいけないのかがわからず、
陰ながら案じていたのだが。
どこの精神病院に入院したのだろう?でも聞くのも憚られる。

いったい彼に何があったのか。
家庭円満、子供にも恵まれ、病院でも信頼厚く、
彼自身も指導医の資格もとって頑張っていたのだけどな。

優秀すぎたのか・・紙一重という言葉が頭をかすめている。
凡人の私にはヒトの精神の「深い闇」がわからないままなのだろうけど、
優秀なヒトには凡人が知ることのない世界が見えるのかもしれない。
そして、おそらく凡人でいた方が安穏な人生を送れるのかもしれない。

彼の体調の回復を心から案じているのだが、
何をしてあげるべきなのかがわからず困っている・・・。