医者であっても畑が違うと素人同様。

内部告発をするには多大な勇気と覚悟が必要であるが、
医者が医者(病院)を告発するのは狭い世界だけにさらに困難である。
その困難に立ち向かった医者がひっそりと鬼籍に入られていたようだ。

【2004年11月17日】
【久能恒子さん死去 医療過誤原告の会会長、小児科医 】
 久能 恒子さん(くのう・つねこ=医療過誤原告の会会長、小児科医)16日午後9時54分、胃がんのため福岡県宗像市の病院で死去、68歳。福岡県出身。自宅は宗像市自由が丘3の11の50。葬儀・告別式は20日正午から宗像市土穴466の1、善光会館宗像会場で。喪主は夫義也(よしや)氏。
 脳腫ようの手術を受けた娘=当時(17)=の死亡は医師の過失が原因として93年、病院と主治医に損害賠償を求め福岡地裁小倉支部に提訴。03年6月、同支部は約7300万円の支払いを命じた。経験をつづった「心なき医療」などの著書がある。(共同通信社速報より)

父親が外科、母親が小児科という開業医の娘の医療過誤の裁判であった。
手術前には良性の下垂体線種の診断が「頭蓋咽頭腫」と誤診されていたこと、
(「頭蓋咽頭腫」は悪性腫瘍)、手術方法も危険な開頭手術ではなくて
より安全なHardy法(下から脳に到達するので安全性が高い)であれば
死亡は避けられたのではないかという告発だった。
10数年前に診断名、治療方法に踏み込んで争うことは
一般の人では不可能でだったろうが、今ほど医療過誤の認識のない時代で
同業者で告発するのはものすごい圧力があったことだろう。
昨年(一昨年?)裁判は全面勝訴となったが、その一方で
癌との戦いもあったのだった。

医師であっても専門が違うと実際の名医は誰なのか、
診断・治療がこれでいいのかが正直言ってわからない。
同じ内科であっても専門分野が違うとわからないことが多い。悔しいことだけど。
こんな時に助けてもらうのは、医学部の同窓生や一緒に勤務していたドクター達。
人脈は医療の世界でも大変重要である。