ドラマ〜生体肝移植

このごろ医療関係のドラマが多い。
医療にかかわることはドラマの題材にしやすいということだろうか。
女優の○○○○さん(個人的に余り好きではないが)が原作という、
肝臓移植をテーマにしたドラマが放送された。
脳死移植が不可能に近いわが国で、もし身内で移植が必要になったら、
という大きな問題提起であった。考えさせられるテーマであったが
移植を強制するような態度やドナーに安全を保障する場面、
移植すれば平穏な生活を取り戻せるという期待を抱かせる内容には、
これでいいのか?と疑問が残った。
早速、自分自身が生体肝移植のドナーである、
政治家の河野太郎さんが日記で怒りのコメントを発表された。

(ごまめの歯ぎしりより)
1月23日
生体肝移植をテーマにしたテレビドラマが放送された。
そのあまりのひどさに怒り心頭。
医者がドナーの候補者に移植しなければ云々という場面など
現実にはあり得ないし、ドナーになることを強制されることが
あってはならない。
何が何でも移植して命を助ければめでたしめでたしではない。
他にドナーの候補者がいない状況でドナーが必要だと
切り出す場面に至ってはなにをかいわんやである。
ドナーになることを拒否した妹は、妻として夫と子供の将来を
考えるという至極まともな決断をしたまでである。
ドナーには手術の麻酔が効き始めるまでいつでも好きな時に
ドナーにやめることができる権利があるのに、
一度決心したことを翻したと医者がなじることなどありえない。
これはドラマだからね、へへへっと笑える状況ならばいいが、
生体肝移植というテーマで、そんなでたらめで非現実的な
ドラマをつくる必要はない。
生体肝移植は手術が終わればめでたし、めでたしではない。
レシピエントの一年後の生存率は90%以下である。
移植をしたからといって娘の小学校の卒業をその目で見ることが
できるかどうかはわからない。
ドナーの47%には後遺症が出る。
現状の医療レベルでは、レシピエントは一生、免疫抑制剤
飲み続けなければならない。
それなのに、この夫婦ならばまるでバラ色の未来が広がっているか
のようなことを暗示するのは馬鹿げている。
いろんな問題が山のようにあるにも関わらず、
脳死移植ができないために生体肝移植が行われているのだ。
番組の制作者はもうすこしきちんと考えてから脚本をつくるべきだ。

河野さんの言葉は体験者だけに重みがある。
メディアの影響は大きいのだから、
やはり報道にかかわる人たちにはもっと取材や勉強を重ねて
責任ある番組を作ってほしい。
このドラマが悪い波紋を呼ばないように祈りたい。

ドラマ自体は渋い俳優の岸谷五朗さんがいい味だしていたのだけど。
特にバースディーケーキのキャンドルに火をともす場面は
記憶に残る名場面だったのですが。