リウマトレックスに思う。

薬害を鬼の首を取ったように報道するメディアであるが、リウマチの貴重な薬の副作用が新聞のトップを飾った。リウマトレックス=MTXは代謝拮抗剤であるが、抗がん剤としてはずっと以前から使用されてきている。血液・消化器系の悪性腫瘍ではかなり使用量も多くなるが、MTX自体には抗がん剤の中では比較的副作用が少ない印象を持っている。

そうは言っても抗がん剤といえば重篤な副作用が起こることは当然予測されるはずであるし、自分がリウマチ患者に使用する場合もその旨承知して使ってきた。何をいまさらという感じだ。定期的な検査は必須であるし、使用する患者にもそれなりの副作用があることを納得してもらわなくてはいけない。抗がん剤使用に慣れていれば当たり前のことだ。

イレッサの時に、(効果に目を奪われたのか)経験の少ない医者が比較的安易に使用したかもしれないこと(噂と推測でありますが)が、よけいに社会問題化させたように感じたが、MTXも同じ道を辿らないか心配だ。薬の副作用としては常にメーカー記載以外の注意も必要である。(現に私もMTXで記載以外の重篤な副作用を経験した。この症例のことはどこかで発表しなくてはと思いながら・・3年間放置している。)

薬の使用についてはいくら本を読んで知識を仕入れても実際の臨床で使う経験が必要だと思う。痛い目に会わない医者はほとんどいないだろう。(私も同僚も過去に少なくないミスをしている。致命的ではないが、発見が遅れたり、処置に手間取ったりといった類のミスだ。経験不足が招いたミスともいえる。しかし成長するために避けられないミスもこれからは批判対象となるのだろうか?)

本では得られぬ知識が医療の現場には本当に多い。もちろん、私も未だ日々修行の身であるし、医者をしている以上終わりのない修業の道だと思っている。