個人情報保護の範囲

月からいよいよ個人情報保護法案が実施され医療の現場も変わりつつある。部屋の外の患者名やベッド周囲の名前の明示をやめるのは時代の流れと理解するが、ナースセンターの患者名を隠すとか、カルテの背表紙の名前も書かなくするいうのはいきすぎのような気がする。
以前の日記で、ムンテラ(この用語も業界用語なのでこれから止める方向にいくようだ、インフォームドコンセントといえばいいのかしら?)をする時に、まず患者に許可を得てから家族に話をすることが義務付けられたら、告知を受けたくない患者が否定される(=知りたくない自由が奪われる)ことを今の社会はうけいれるのだろうかと書いたが、次はレセプト開示もされるという。

【2005年3月8日】
 厚生労働省は、患者の診療内容が記載されている診療報酬明細書(レセプト)について、4月に全面施行される個人情報保護法に基づいて患者が健康保険組合など保険者に対して開示を請求した場合、医療機関が拒否しても原則として開示するよう近く保険者に通知する。

日本の医療はレセプトに保険病名がなければ保険の支払いは通らない。したがって過剰な病名をつけざるを得ないのだが、患者が自分にレセプトで自分についている病名を見たら驚くだろうなと思う。なぜ、こんな病名をつけられるのか?と怒る人もいるだろう。私自身、自分のカルテにとんでもない病名をつけている。(形式上は他の先生の指示にしてあるが)過剰な検査や投薬は極力さけるつもりでいても保険を通すためには細かな病名が必要だからだ。たとえば糖尿病とつけても合併症やこれにかかわる病態の診断や治療のためには、個別にそのつど病名の追加が必要になる。主病名から連想されることは省略できればいいのだが、レセプトをチェックするのは医者ではないので、ひとつひとつに病名をつけねばならない。これでいいのか?と皆思っているが、ごく一部の悪徳業者がいるためにこんなに妙な仕組みが強化され年々締め付けが厳しくなっているようだ。大部分の医療機関は良心に従ってまっとうな治療をしているのに。

話はずれたが、行き過ぎた個人情報保護には批判的な気持ちをもっている。情報保護とリスクマネージメントとは表裏一体の面もあるので、これからは両者のバランスが難しくなりそうだ。