黙祷〜日本人としての価値観への誇り。

HIV関連で重大な過ちを犯した安部英帝京大元副学長が死去。罪を認めることなく去ってしまった。同じ医者として、そして問題の血液製剤を使った経験を持つ者として、真摯に謙虚に見つめなおす態度を見せてほしかったと思う。百歩譲って、当時の判断が困難であったとしても、裁判で無罪となったからお墨付きをもらったとしても、今もこれからも苦しみ続けるエイズの患者さん達への暖かな心遣いを少しでも見せてもらいたかった・・。
昨今のちょっと理不尽なほど、医療サイドへの厳しい判決が目立つ中で、無罪判決を勝ち得たのは、やはり大物であったからなのだろうか?判決内容はかなり安部教授に肩入れしたもので、客観的には公正な判断ではなかった・・と私は思うのだが。でも死者を鞭打つことはもうやめようと思う。それが日本人の美意識なのだから。(たとえば靖国A級戦犯も死後はすべての罪は浄化されて英霊となる。この感覚は日本人以外には理解できないものかもしれないが、私はこのように考えることのできる国民性を誇りに思っている)


列車事故、ますます死者が増えている。現場では今日も不眠不休の救出活動が続けられている。JRへの激しい責任追及の言葉がほとんどだが、遺族の中に「JRの方も消防の方も、一生懸命やって下さってる。その方達を責めても仕方がないんですよ。警察も消防も本当によくやってくれています・・・ ここにいる皆さん(マスコミ)も含めて、もちろん私も含めてですが 、何か日本の秩序みたいなもんがどうかしてしまったんじゃないでしょうか?
そういうことの結果がこういう事故に現れているような気がしてなりません」と涙声で仰っていた方がいた。思わず一緒に泣けてしまった。自分が辛い状況の中で、感情を抑え、人の立場を思いやることができる、これこそ日本人独特の価値観であり、美徳だと思う。残念ながら時代とともに失われつつある美徳かもしれないが。


人を責めること、自分の権利を主張することばかりの殺伐とした世相が、いろいろな悲しい事件の根っこにあるように思える。

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)

四日間の奇蹟 (宝島社文庫)

文章の確かさと内容の美しさは認めるが、どこかで読んだようなオチであるのが残念。(その作品よりも中身は高いと思うけど)