理不尽な判決は医療だけではない。

理不尽な判決といえば、医療裁判と思っていたが、美容師の世界も他人事ではなかったようだ。


毎日新聞 2005年11月16日 
髪形訴訟:美容院側に24万円支払い命令 東京地裁
 キャバクラで働く東京都内の女性(27)が「依頼と違う髪形にカットされ精神的損害を受けた」などとして、美容院に600万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は16日、美容院側に24万円余の支払いを命じる判決を言い渡した。水野有子裁判官は「容姿が重視される職業に携わっており、髪形の影響は大きい」と指摘した。
 判決によると、女性は昨年4月、渋谷区の美容院で、「巻き髪やアップにできるよう、最も長い部分の長さは残す」などと注文。しかし、カット後は頭頂部が約7センチの短さになった。女性は途中で席を立った。美容院側は代金(1万6500円)を受け取らなかった。女性は「自分のアピールポイントは美しい長い髪で、接客に自信が持てない」としてエクステンション(つけ毛)をつけるなどした。
 女性の給料は売り上げに応じて決まることから水野裁判官は「エクステンションで明白な減収を防いだ」と判断し、その費用などを損害と算定した。


冗談のような訴訟だと思いませんか?


何でもこの客はお昼過ぎに来店し、髪染めを4回やり直させ、カットが気に入らないと言ってお金も払わず、21時ごろに帰ったらしい。いわゆるクレーマーじゃないかと思うが、こんな判決をだすとはあきれはてる。こんなことで訴訟を受けおう弁護士も、判決が社会に与える影響も判断できない裁判官にも失望。世の常識を狂わせているのは法曹界の人たちなのではないか?肥満はマクドナルドのせいだと訴えるアメリカに益々近づいてきている情勢が不気味だ。


この裁判にかかわった人たちばかりがおかしいのではないようで、テレビのコメンテイターで出演していたK弁護士は「理容でもきちんとした契約であり、このような訴えが認められればサービス向上が期待できるので、客側にとっては朗報だ」とのたまわった。
それともこの判決やコメンテイターの言葉をオカシク思う私の感覚が常識はずれなのだろうか?


2005/11/18 (金) キャリアアップ。
(美容師つながりで日記を続けてみる。)上の訴訟ではクレーマーにあったであろう当事者の美容師さんに同情する私だが、気に入った美容師に巡り合うのは極めて難しい。私も長い間、1〜2度行っては別の美容院を探すというホスピタルショッピングのような状態が長い間続いていたが、この6年間はM美容師一すじになっている。


前の勤務先の病院への通勤路にあった小さな美容院にふと立ち寄ったのが最初だったが、カットの上手さに驚いた。こちらの要望も真摯に受け止めてくれるし、無駄な話もしてこない(結構美容師さんに話しかけられてかえって気を使うことが多い)。気に入って3年くらい通いつめたが、ある時「今度別の店に行くことになった」と知らされた。2号店を出すことになり、その店長に納まることが決まったらしい。私の勤務先に近くなるので、こちらも願ったりのことで、彼女の転勤についていっていた。


そして先月。「念願だった独立が決まりました」と言われ、場所を聞いてびっくり。更に私の勤務先に近くなった。先日彼女のお店に初めて行って見たが、立派なお店でスタッフも二人ほど雇っていた。一人の美容師さんのキャリアアップを見続けてきたんだな〜と感慨深かった。何も言わなくてもこちらの希望をわかってもらえるほど親しくなった方なので、自分のことのように嬉しかった。


片や、私といえばずっとしがない勤務医生活だ。将来のキャリアアップの見込みもゼロ。どんどん出世してく女性と、長らく停滞している自分。差は広まるばかりだ。