地方は僻地でなくても医者が足りない。

■2005/12/16 (金)
今の勤務先はこの地方では一番の都市で周りの病院の数も多い。だから時間外救急でも専門外であれば、比較的気楽にどこそこを受診してくださいとやんわり断れる。(患者を断るのは恥!と研修医時代は教わったが、最早時代が、患者の意識が変わってしまったのだ。)

一方、以前の勤務先はここから車で40分くらいの、小都市と小都市の中間にある人口3〜4万の市にあった。前勤務先の病院は非常に安定した経営母体であり、赤字が出ようが資金は豊富で安心して医療を行えた。少し前に移転、新築したので、広く明るい超近代的な病院になった。私は移転前の立ち上げ段階で少しかかわっており、新しい病院で働くのも楽しみだったが、家からの近さを選んで今の勤務先に転勤した。

とびきりの新しい病院が誕生したので、スタッフも充実してきているのだろうと思っていたら、なかなか大変のようだ。ある研究会で、新病院移転に当たって中心になっていた内科のトップが病院を辞めてしまったと聞いた。トップだった方は、新病院立ち上げの手腕を乞われて招かれた先生で、おそらく骨を埋めるつもりで就職されたはずなのだ。病院が軌道に乗ったところで辞められるのは何かしら深い事情があったのだろうと思う。

その病院には私の医局と、別の内科医局で医者が派遣されていたが、私の後任者を最後に、うちの医局はその病院から引き上げた。もうひとつの医局もスタッフを引き上げたようで、病院のホームページでは聞いたことのない内科ドクター数人の名があった。
その地域ではそこしかないので、なんでも引き受けねばならない忙しい病院であった。これもそれぞれの医局が人事を引き上げられた原因になるのだろうと思う。他の科の患者を不安になりながらも夜間診療し、外科は手術以外は一切内科に丸投げしていたので、内科に加えて外科のトラブルの患者も診なくてはならず、これまでで一番働かされた病院だった。時間外を何十時間も必要としたので、逆に言うとその分給料は良かった。が、そこで私はボロボロに疲れ切ってしまった。今ののんびりした病院に転勤しなかったら、今頃は精神を病んでいたかもしれない。

前勤務先のホームページには、急募!内科・小児科・産婦人科の文字が躍っていて驚いた。決して僻地ではない所、安定した経営で給料も良く、施設もピカピカの病院でも、人が退散してきているのだ。地方の医療はどうなってしまうんだろう?