悲しい、ただひたすらに。

■2006/11/30 (木)
ふと目に入った書き込み。
エタノール誤注入死(後述)についての真相を知る医師からのもの。
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この事件が起こった際、この病棟で勤務していました。診療科が違ったので、直接の関係は無かったのですが、当時の看護婦さん、婦長さん、小児科の先生方をよく知っていま す。事故に関しては、弁解の余地はありませんが、本来この病気ではこの年まで生きながらえることはできません。小児科の先生方の、想像を絶する努力の結果この歳まで、 この患者さんは生きることができました。本来の寿命をはるかに超えるところまできましたが、ついに末期となり、人工呼吸器につながれていた訳です。ちょっとしたきっかけで 、いずれにせよお亡くなりになっていたと思われます。たまたまそれが、この事故だったのです。最初は患者家族側からも感謝の言葉があったようなのですが、そのあと、どういう訳か訴訟という場に持ち込まれてしまいました。当時の担当の先生や婦長さんの当惑が今でも、思い出されます。
(片田舎の医師さんの書き込み)

事故と裁判の報道より。
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11月1日京大病院側が敗訴 事故隠しは認めず
 京都大病院(京都市左京区)で00年2月、人工呼吸器に消毒用エタノールを誤注入され中毒死した藤井沙織さん(当時17歳)の両親が、大学と担当医(52)、看護師ら計9人に約1億1400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が1日、京都地裁であった。中村哲裁判長は大学と、誤注入に直接かかわった看護師4人に総額約2813万円の支払いを命じた。「事故隠し」は認定しなかった。両親は控訴する方針。
 判決によると、沙織さんは99年12月から京大病院で人工呼吸器を継続利用。看護師が蒸留水と取り違えたエタノールを00年2月28日から約53時間吸引させられ、3月2日に中毒死した。
 医師は敗血症ショックと判断し、誤注入を死亡診断書に記載せず、発覚の2日後まで両親に伝えなかった。カルテや看護記録にも死亡当日まで記さず、2月29日のカルテに敗血症ショックに合致する記載が後から書き加えられていた。 判決は看護師4人について「容器のラベルを確認しなかった」と注意義務違反を、大学には使用者責任を認定した。
 事故隠しについては「敗血症ショックとの診断に誤りがあったとまでは言えず、隠ぺいがあったとは認められない」とした。

この事故の顛末は、今の医療を取り巻く風潮を反映しているようで・・患者は医者を信用したいだろうし、医者はその信頼に答えたいのに・・・読んでいて本当に悲しくなってしまった。
当然のことながら、病気発症の責任は医者にはない。そして治療の過程で良好な関係が形成されていても、結果が悪いと全て医者が悪いことになってしまう。それまで良好だった家族がある日突然手のひらを返したように敵意を剥き出しにして襲いかかる、医療機関に対して持っていてくれていた感謝はどこに消えてしまうのか、とこちらが戸惑うことが稀にある。
それまで積み上げてきた事情を知らない第三者から、無責任なことを吹き込まれたのではないかと悲しくなる。
医療に不信感をもっているような、遠い親戚や、患者とかかわっていない第三者から予想外の問題がおこることが多いというのが、残念ながら医者の間では常識になりつつある。お互いに批判の目でみてしまうって、なんて悲しいことなんだろう。