勤務医不足の真の原因は?

■2007/04/13 (金)
M3での「 ベテラン勤務医 」さんのコメントより。医師不足といわれ、医療崩壊を招いた原因が、適切かつ簡潔にまとめられています。心から同意したので、転載させてもらいます。(当直明けでくたびれ果てたので、自分の意見は略します。今日はこれ以上の余力がないので・・・)著作権に触れるかもしれないので期間限定です。なるべく多くの人の目に触れますように!

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勤務医不足、医療崩壊が叫ばれ、勤務医の過酷な労働環境が浮き彫りにされていますが、このこと自体は今に始まったことではありません。私が若かった頃、病院に泊まり込むこ とはむしろ日常的でありました。 今、勤務医不足が深刻となることにはほかの要因が大きいと考えます。

1)医療がサービス業と定義され、患者と一般社会は当たり前のように過大なサービスが要求されるようになりました。その中で医療行為は尊厳を失い、医師の誇りが奪われ、医療 者の自己犠牲の意味は消失しました。

2)国家経済が停滞する中で、医療に競争原理が持ち込まれた結果、病院経営は厳しくなり、成果主義、評価制度、50歳での昇給停止などが導入されました。これでは中年以降の 医師は安心して勤務できません。

3)大学病院の独法化、労災病院・厚生年金病院・社会保険病院の組織再編成など、病院は研究・教育・診療よりも経営を優先することを強いられています。公的病院への補助金も ここ数年は著しく減少し、病院機能の低下は必至です。

4)マスコミは医療を激しく攻撃し、司法は不合理な正義を振りかざして、結果責任を病院に押し付けてきます。警察は医療の本質も理解せず、刑事責任を問い、医師を気楽に逮捕 します。普通の感覚を持った人間はいやになってしまいます。

5)新研修医制度はもともと都会の大病院に医師を集中させるシステムです。2年間で高度な知識・技術を習得し、人格の涵養を図ることを義務付けられれば、誰でも症例と指導者 の豊富な大病院を目指します。病院は勝ち組と負け組みに分かれることになります。この制度を策定・推進した担当者は既に現場を離れ、誰も責任を取ろうとはしません。

6)厚労省は、物の本質を知ってか知らずか、診療報酬制度をいじることだけで医療現場を経済的に誘導しようとするのみです。うまくいかなければ、また次の小手先の策を弄しま す。どこまで行っても、ことは解決しません。

良質な医療を求めるのであれば、それに見合った資金を投入すべきです。公的資金であれ自費であれ、金はかけたくないとするなら、それなりのサービスで我慢するべきです。

医療者も無駄を無くすことには真剣に取り組まねばなりませんが、それにも限度があります。医療費抑制政策の中でことを改善しようとすることはもはや無理と考えるべきです。

いまや、「誰が悪いのだ。」などといっている場合ではなく、国全体で議論されることが期待されます。やはり政治の問題でありましょう。