専門家の意見〜白い巨塔の矛盾点

外来の合間にフジテレビのホームページの白い巨塔のBBSを読んでいたら、
放射線科の専門医からみた、ドラマ矛盾点を書き込んであった。
大変詳細に説明されており、さすが〜と感心してしまった。
転載は違法かな・・と思いつつ抜粋してみる。

初めて投稿させていただきます。
私は現在首都圏の大学病院で放射線診断専門医をしているもので、特に胸部放射線診断を専門にしています。原作を何度となく読み、田宮版も全て見、山崎豊子原作の白い巨塔をこよなく愛するものです。
昨年からこのBBSでも極めて熱心に議論が繰り返されていますが、原作や田宮版と比較して様々な意見や思いがあることは十分承知しております。その上で私自身は改めて今回の白い巨塔も素晴らしいできであると思い、まずドラマ制作に関わっている全ての方々に敬意を表します。
元来白い巨塔は極めて社会性の高い内容で、原作でも山崎豊子さんの詳細な取材を反映すべく、極めて医学的に高度な問題について議論が展開されています。それ故にせっかく完成度の高い新白い巨塔において、残念な思いがするいくつかの点について皆様に知っておいて頂きたいと思います。少々専門的ですが、どうかご容赦下さい。
まず、第一に、第2部で最大の争点の一つになると思われる胸部CT所見ですが、テレビで拝見する限り、あのように微小で、結節病変として捉えにくい病変は、到底肺転移とは考えにくいという点です。元々食道癌は肺転移を起こすとすれば大部分が血行性転移で、早期の孤立性肺転移でもほとんどがCTでは結節病変として認識できると言えます。従って、この場合財前の判断通り、通常は炎症性病変と捉えるのが普通であると思います。ただし例外として、肺癌など組織学的に腺癌の一部には、血行性転移でもあのような形態の転移があり得ます。
第二に、あのような微小病変に対して、食道癌の術前に胸腔鏡検査で確認することは極めて考えにくいプロセスです。その理由は、仮に万が一転移を考慮した場合でも術後の経過を見ないと判断が困難で、通常は急速に増大することは考えにくいからです。また仮に術前に組織を確認するにしても、食道癌の手術が左開胸アプローチであれば術中に確認することの方が合理的で、さらにあのような肺内の微小病変は胸腔鏡でも部分切除しないと難しいと思います。従って、ドラマでの里見の発言はナンセンスな発言だと思います。

第三に、食道癌は縦隔リンパ節転移を頻繁に伴いますが、癌性リンパ管症を術後に発生することはほとんどなしと言っても良いぐらいのことで、極めて非現実的です。特にあのような微小転移が術後十何日かで癌性リンパ管症になることは考えられません。原作のように、少なくとも早期癌類似進行胃癌であれば癌性リンパ管症の発生はあり得たのですが・・。
第四に、佐々木庸平の呼吸状態が悪化した際に、里見がHRCTで確認すべきであると柳原に進言しましたが、あのような呼吸困難を生じている患者さんに対してHRCTを行うことは通常困難です。また、HRCTの所見は極めて専門的な判断が必要で、里見のような消化器内科医や柳原のように経験の浅い外科医には難しいことだと思います。専門用語を無意味に挿入したとしか思えないです。
以上、大変長くなってしまい申し訳ありませんが、せっかく手術に関する点では消化器外科や呼吸器外科のアドバイザーが関与していながら、第2部の核心に近い画像診断の問題点でいくつかの医学的矛盾がみられるのは非常に残念な気持ちです。
以上が放射線専門医からの書きこみです。

一般の方からは難しくてわからない、という意見もあったが
この矛盾、医療関係者なら多くの人が疑問に思っているだろう。
上の書き込みへのレスには、まだある他の矛盾点に気づいた内科医の
コメントもあった。

あら捜しばかりしていると、
「医療はどうあるべきか」を問うドラマの本質を見逃しそうだけど、
気になるんだもん。
医療ドラマのあら捜し・・・
文句つけたり、怒ったりしながらも結構楽しんでいる。